レッドブルはすでに、わだかまりを解決したと発表したものの、統括団体FIA(国際自動車連盟)の元会長マックス・モズレーが、マーク・ウェバーとセバスチャン・ベッテル(ともにレッドブル)のクラッシュについて意見を述べた。
レッドブルが問題解決のリリースを発表したことで、非難合戦も終結に向かっていたが、モズレーは『Die Welt(ディー・ヴェルト)』へ、問題となったクラッシュはウェバーの責任だと語った。
ちなみに、レッドブルのオーナーであるディートリッヒ・マテシッツとモズレーは、親密な友人であり、F1でも密接な関係になっていた。
また、マテシッツの右腕として、レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコも、当初はウェバーを非難していた。
「私の意見としては、セバスチャン・ベッテルはあのクラッシュの責任があるとの非難を受けるべきではないと思う」
「接触の時点で、ベッテルは明らかにウェバーよりも速かった。あの時点では、彼(ベッテル)にオーバーテイクをする権利があり、そうする必要もあった」とモズレーはコメントしている。
レッドブルは、ウェバーが燃料を節約するモードでエンジンを使用する一方、ベッテルは全開で走れる状態だったこと、そして、ウェバーがチーム側へ、ベッテルにペースを落とすよう伝えて欲しいと無線で連絡してきたことを明かした。
しかし、ベッテルはこのとき、マクラーレンからのプレッシャーを受けており、ペースを落とせるような状態ではなく、タイヤの状態もベッテルの方が良好だったとのことだ。
またチーム側の主張によると、ウェバーのレースエンジニアがウェバーに対し、ベッテルにオーバーテイクを仕掛けられても、無理に争うようなことはするなとの指示を伝えていなかったという。
当初チーム側は、ウェバーにクラッシュの責任があるとしていたものの、F1界のほとんどは、2台が並走している際にベッテルが急激に右へ曲がったことがクラッシュの原因だと考えている。
「私は賛成できない」とモズレーは語り、当初チーム側が主張していた意見を支持していると明かし、こう続けた。
「接触の前にベッテルがウェバーを抜いていたことは明らかだ。ウェバーはもっとスペースを空けるべきだった。彼らはコースのかなり左側を走っていたんだからね」
「2台とも時速300km近くで走っているのだから、リスクを考える必要がある。彼(ウェバー)は、レースのどこかほかの時点で、ポジションを取り戻すことを狙うべきだった」
同じことがベッテルにも言えるのではないかと『Die Welt(ディー・ヴェルト)』のインタビュアーから指摘されると、モズレーは次のように答えた。
「ベッテルとウェバーの件で決定的な要素は、一方のドライバーが速く、もう一方は遅かったことだ」
しかしモズレーは、禁止されているチームオーダーのような戦略を使って、ベッテルがウェバーの前に出ることをレッドブルが希望していたとの意見を否定した。
「私は、そうは思わない。ベッテルはルイス・ハミルトン(マクラーレン)からのプレッシャーを受けており、ウェバーよりも速かった。マクラーレンを引き離すには、遅いウェバーを抜く必要があったんだよ」
「もしその状況が無線でドライバーに知らされたとしても、それはチームオーダーやドライバーズ選手権の操作にはあたらない。たんなる状況説明であり、ドライバーにとって必要な情報だ」とモズレーは加えている。
フェラーリが最終ラップで順位を入れ替え、現地のグランドスタンドがブーイングの嵐になり、大問題になった2002年のオーストリアGPと比較し、モズレーはこう述べた。
「片方は意図的に世界選手権を操作するものだったが、他方は正当なレースだと説明できるものだ」