数日後にはF1日本GPが開幕するが、今回は普段あまりスポットライトを浴びない部分に迫ってみる。
・世界で26人のみ選ばれたドライバー
2010年のF1には、13チームが参戦している。どのチームも2人のドライバーを走らせることから、F1ドライバーは世界で26人しか存在しない。世界中にごまんといるレーシングドライバーの中から、たった26人のみが戦うことを許される特別な場所。それがF1だ。
・「速い」だけではなれないF1ドライバー
その限られたF1シートを巡り、毎年激しい争奪戦が繰り広げられる。しかし、F1ドライバーになるには「速い」だけでは通用しない。何らかの形で大きな「サポート」を得ることが必要なのだ。そのサポートの1つが、自動車メーカーやF1チームが展開する「ドライバー育成プログラム」に加わること。現役ドライバーの中では、レッドブルの育成プログラム出身であるセバスチャン・ベッテル(レッドブル)がその例だ。
そして、もう1つ大きな要素になるのが「お金」の力。F1では、ばく大な予算が必要になることから、特に下位チームは資金的に苦しい状況になりやすい。そのためチーム側は、「速さ」とともに、「スポンサー」という面での貢献もドライバーに求める。今シーズンの場合、ルノーのビタリー・ペトロフが約18億円もの資金を持ち込んでシートを獲得したと言われている。
・シーズン中にもシート争い
このシートを巡る争いが繰り広げられるのは開幕前だけではない。今シーズンも、シーズン中にドライバーの交代があった。ヒスパニア・レーシングでは、第10戦イギリスGPでブルーノ・セナに代わって、山本左近がレースに出場。その翌戦ドイツGPから左近は、もう1人のドライバーであるカルン・チャンドックに代わってレースに出場している。
しかし、そんな左近も第15戦シンガポールGPでは、レース出場を逃した。チーム側は体調不良を理由にしていたが、このレースでヒスパニア・レーシングは、交代したドライバーの母国でスポンサーを獲得していたことから、単なる体調不良ではないとの意見も多い。こういった「お金」の面が非難の対象になることもあるが、F1がスポンサーから活動資金を得るプロスポーツである以上、スポンサー獲得の能力も現代のF1ドライバーに求められる資質の1つになることは避けられない。
・成績を残せなければ解雇
シーズン中にドライバーが交代したのはヒスパニア・レーシングだけではなかった。小林可夢偉が所属するザウバーでもドライバーが交代した。第14戦イタリアGPまではペドロ・デ・ラ・ロサが可夢偉のチームメートだったが、前戦シンガポールGPからはニック・ハイドフェルドが可夢偉のチームメートになった。
交代の理由についてチーム側は、デ・ラ・ロサの走りが安定していなかったことや、可夢偉とデ・ラ・ロサがほぼ同じ速さを見せたため、クルマの能力を正確に把握しにくかったことを挙げている。可夢偉に比べると、デ・ラ・ロサは獲得したポイント数も少なかった。
このように、シートを獲得したからといって、決して安心できないのがF1だ。成績が落ちるなどした場合、そのドライバーをけ落としてシート獲得を狙うドライバーは多いことから、F1ドライバーは常に全力を出すことが求められる。10月8日(金)に開幕する日本GPでは、そんなF1ドライバーによる真っ向勝負の戦いを間近に見ることができる。